記事の要約
- MediaTek社の複数のチップセットに脆弱性CVE-2025-20671が発見された
- 競合状態による境界外書き込みの可能性があり、システム権限を持つ悪意のある攻撃者による権限昇格につながる
- パッチ(ALPS09698599)が提供され、Android 14.0と15.0が影響を受ける
MediaTekチップセットの脆弱性情報公開
MediaTek社は2025年5月5日、複数のチップセットにおけるセキュリティ脆弱性CVE-2025-20671に関する情報を公開した。この脆弱性は、サーマル処理における競合状態が原因で境界外書き込みが発生する可能性があることが特徴だ。
この脆弱性により、システム権限を既に取得している悪意のある攻撃者が、権限をさらに昇格させることが可能となる。攻撃にはユーザーの操作は必要ないため、危険性が高いと言えるだろう。
MediaTek社は、ALPS09698599というパッチIDで修正プログラムを提供しており、Android 14.0と15.0が影響を受けることが明らかになっている。影響を受ける製品にはMT2718、MT6878、MT6897、MT6899、MT6989、MT6991、MT8196、MT8391、MT8676、MT8678が含まれる。
修正プログラムの適用は、各デバイスメーカーによるアップデート提供に依存する。ユーザーは、デバイスメーカーから提供されるアップデートを速やかに適用することが重要だ。
影響を受ける製品とバージョン
製品名 | 影響を受けるAndroidバージョン |
---|---|
MT2718 | 14.0, 15.0 |
MT6878 | 14.0, 15.0 |
MT6897 | 14.0, 15.0 |
MT6899 | 14.0, 15.0 |
MT6989 | 14.0, 15.0 |
MT6991 | 14.0, 15.0 |
MT8196 | 14.0, 15.0 |
MT8391 | 14.0, 15.0 |
MT8676 | 14.0, 15.0 |
MT8678 | 14.0, 15.0 |
境界外書き込み(Out-of-bounds Write)について
境界外書き込みとは、プログラムがメモリ領域の境界を超えてデータ書き込みを行う脆弱性のことだ。これは、バッファオーバーフローの一種であり、予期せぬ動作やクラッシュ、さらには悪意のあるコードの実行につながる可能性がある。
- メモリ領域の不正なアクセス
- プログラムのクラッシュや予期せぬ動作
- 悪意のあるコードの実行
今回の脆弱性では、競合状態によってこの境界外書き込みが発生する可能性がある。競合状態とは、複数の処理が同時に実行される際に、予期しない順番で実行されることで発生する問題だ。
CVE-2025-20671に関する考察
MediaTek社の迅速な脆弱性情報公開とパッチ提供は評価できる点だ。早期発見と対応によって、被害の拡大を抑制できた可能性が高い。しかし、全てのデバイスメーカーが迅速にアップデートを提供できるとは限らないため、アップデート適用が遅れるデバイスはリスクにさらされるだろう。
今後、同様の競合状態による脆弱性が他のチップセットでも発見される可能性がある。そのため、MediaTek社は開発プロセスにおけるセキュリティ対策の強化、特に競合状態の発生を抑制する仕組みの導入が重要となるだろう。また、ユーザーに対しても、アップデートの重要性を周知徹底する必要がある。
さらに、将来的な対策として、ハードウェアレベルでのセキュリティ強化も検討すべきだ。例えば、メモリ保護機能の強化や、境界外書き込みを検知する機構の導入などが考えられる。これにより、より安全なチップセットを提供できるようになるだろう。
参考サイト/関連サイト
- CVE.「CVE Record: CVE-2025-20671」.https://www.cve.org/CVERecord?id=CVE-2025-20671, (参照 2025-05-08).